津軽鉄道・ストーブ列車 ~酒、スルメ、ストーブ…旅人骨抜きの列車旅~

 

震える寒さの中、ストーブを囲んで酒を飲みながら目的地まで移動が出来たら…。
そんな“怠惰な旅”を叶えてくれる、素晴らしい鉄道が存在します。
それが青森県、津軽鉄道の『ストーブ列車』!
今回は、その旅人をとことん骨抜きにする『ストーブ列車』についてまとめます。

 

今回のストーブ列車については、YOUTUBEに動画をアップしていますので、是非そちらも合わせてご覧ください。

 

 

津軽鉄道“ストーブ列車”の概要

 

津軽鉄道は、青森県の津軽半島のほぼ中央部を走る鉄道で、津軽五所川原駅(JR五所川原駅)~津軽中里駅間を結びます。

 

 

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この津軽鉄道では、毎年12月~3月の冬季限定で、『ストーブ列車』という企画列車が運行されています。
実に寒さの厳しい北国らしい列車です。

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運行期間であれば、毎日運行されているのも非常に嬉しいポイント! ※1
指定席はなく、事前予約もありませんので、いつでも思い立った時に乗車できるのも素晴らしいポイントです!

事前に時刻表を確認しておく事をお勧めします。
コチラで確認出来ます⇒ ■『津軽鉄道株式会社/時刻表』

 

ただし、土日祝は混雑が予想されますので、早めに駅に移動しておくと良いでしょう。
特に津軽五所川原駅や芦野公園駅では、多くの乗車客が見込まれますので、注意しておくと良いでしょう。

また、ストーブ列車の利用には、利用区間の乗車券の他に、ストーブ列車券(400円)が必要となります。(車内改札の際に現金で支払う事も可

ちなみに、ストーブ列車には普通車も連結されていますので、それを利用するのであれば、ストーブ列車券は必要ありません。
『津軽鉄道株式会社/運賃表』

 

※1 = 12月1日及び12月中の平日は1日2往復、それ以外は毎日1日3往復運行されます
補足①12月1日 = 平日、土日祝に関わらず2往復
補足②12月中の平日 = 1日2往復
補足③12月中の土日祝 = 1日3往復
補足④1月~3月 = 毎日3往復

 

 

冬の津軽ならではの魅惑の旅、ストーブ列車の旅

 

ここから実際に乗車した時の様子についてお伝えしましょう。

私がストーブ列車を利用した当日は、弘前(ひろさき)市から移動後に津軽鉄道に乗り換え、という段取りで実行しました。
この日は是非とも1便目の09:35津軽五所川原発に乗車したかったのですが、弘前駅からだと、丁度良い列車は、09:27五所川原着の快速リゾートしらかみ2号しかない…。
その1本前だと、07:32着と、2時間も持て余す事になってしまう…。

という事で、多少の混雑は覚悟の上、快速リゾートしらかみ2号で移動する事にしました。

 

 

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09:27、JR五所川原駅に到着します。

本来なら、ここで津軽五所川原の駅舎に行って乗車券とストーブ列車券を購入するのですが、乗り換え時間は、たったの8分…。
幸い、JR五所川原駅と津軽五所川原駅は、駅構内の連絡通路で繋がっている構造となっています。
また、乗車券とストーブ券が無くとも、車内改札で現金支払いが可能

よって、ここは改札を出ずに、真っすぐ津軽鉄道のホームへと向かいます。

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津軽鉄道ホームに到着。
駅員さんがストーブ列車の乗車口を案内してくれますので、そこから乗り込みます。

 

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車内に入った瞬間、熱気とも言えるような温かい空気に囲まれる事となります。
賑やかな声が響き渡る車内。

やはり、冬の名物列車という事もあって、休日は津軽五所川原駅からの乗客は多め。
ストーブ周りの席は当然、すでに取られちゃってる状態ではありましたが、席は空いていましたので、とりあえずそこに腰掛けます。

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そして間もなく発車する列車。

魅惑の旅が始まります!

 

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ストーブ列車では車内販売もされており、そこで食べ物や飲み物の購入が出来ます。

特に、スルメイカを購入すると、アテンダントさんがストーブの網で買ったばかりのスルメを焼き上げてくれます。
私を含めて、この光景には乗客の皆さんも興味津々!

手際よく焼いてくれるアテンダントさんと網で踊るようなスルメの様子を、カメラに収めようとストーブ周りに注目します。

興奮と悦びでさらに温かさが増してゆく列車。
そんな心躍る乗客を乗せて、ストーブ列車は、どんどん北上を続けていきます。

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しかし、外の景色を見ていると、雪の少なさが目立ちます。

私が乗車した2020年は、記録的な暖冬。
東北と言えども、雪が全く積もっていない場所が数多くありました。

青森も例外ではない様子。

北上して長閑な景色に変化するにつれて、ようやく雪景色を目にする事が出来ましたが、それでも「これが東北だ」という雪の量にはほど遠い。

雪を掻き分けるように進んでいく光景であればなお良かったのかもしれませんが、それでもこの特別な列車で行く旅は素晴らしいの一言に尽きます。

 

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車内改札では、乗車券とストーブ列車券の二つを車掌に提示しますが、時間がない等で買う時間がなかった場合は、この車内改札の際に支払います

この場合、発着地、日付、運賃の項目に入鋏(にゅうきょう)された紙の券が渡されます。
通常の切符は硬券となっていますが、これはこれで良いかも。

 

 

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芦野公園駅に到着すると、多くの乗客がここで下車しました。
やっとストーブの前の席に座れる…!

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念願のダルマストーブを目の前に、傍らでは雪景色が流れていく…。
何という贅沢な旅。

ただ、一概にストーブの前が良いとは言い切れません。
なぜならストーブ前の座席は、想像以上に暑いから…。

しかし、せっかくのストーブ列車の特等席、このまま終点の津軽中里駅まで向かう事にします。

 

 

本州最北の私鉄駅「津軽中里駅」にて

 

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津軽五所川原駅を出発してから45分、列車は終着の津軽中里駅に到着します。

本州最北端の私鉄駅

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手書きの駅名標がまたなかなか良い感じです。

津軽中里駅では、車内の清掃、先頭のディーゼル機関車の方向転換等の作業に入りますので、そのまま津軽五所川原駅に引き返す場合であっても、一旦改札を出る必要があります。

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出発の10分ほど前から、五所川原方面行きの改札が開始されますので、それまでは駅周辺を散策したりして過ごすのも良いでしょう。
今の内に津軽五所川原駅までの乗車券とストーブ列車券を購入します。

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乗車券、ストーブ列車券ともに味のある硬券となっています。
なぜだろう、普段滅多に見る事がないからか、この厚みのある切符を手にした瞬間に得も言われぬ気持になってしまいます。

今や切符フリーで電車に乗る事が当然となっている世の中、多少不便であっても、こうした前時代的なシステムを敢えて残すのも良いのかもしれません。

これからも津軽鉄道はこのスタイルをずっと続けてほしい。
敢えて残す事で付加価値というものが高まってくるのだと思う。

 

 

10時半を過ぎた辺りでしょうか、「もう乗車できますよ~」と駅員さんに言われましたので、ホームへと向かいます。

改札前で待機していて良かった。
一番乗りでストーブ列車に乗り込む事が出来ました。

席も選び放題!

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そして、改めて車内を見てみると、本当に情緒溢れる“古き良き”様相となっています。

津軽鉄道が全線開業したのは、1930年(昭和5年)11月13日。
ストーブ列車は、その開業したばかりの同年12月に、初の運行がされました。

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現在使われている車両は、昭和23年製の4代目。

シルクハットを被ったスーツ姿のジェントルメンが入ってきて座りそうな…。

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そして、この列車の主役であるストーブ。

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ダルマストーブと呼ばれる丸みを帯びた可愛らしい姿のストーブ。
石炭を燃やす事で暖をとるという、これまた昔ながらの原始的なストーブとなっています。

だからなのか、電気ストーブにはない、体の芯から温まるような炎の力というのがあるようにも思えます。

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津軽五所川原に比べ、津軽中里からの乗客はかなり少な目となっていました。
しかし、だからこそのゆったりとポカポカのレトロ車両を、じっくり楽しめる極上のひと時を存分に味わえます。

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そして、ゆっくり走り出すストーブ列車。
五所川原に向けて、帰りの旅が始まります。

 

 

酒とスルメとストーブ…旅人骨抜きの列車旅

 

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ストーブは、車掌さん(?)が定期的に石炭をくべます。

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赤く燃え上がるストーブにスコップでザクザクと石炭をくべていく光景。
映画やテレビの機関車でしか見た事のない光景だ…。

こうして自分の目で見ると、本当に新鮮に映る…。

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ここで、行きの時は人が多くて注文を控えてましたが、車内販売のスルメと日本酒を注文します。

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日本酒は、青森県弘前市の六花酒造株式会社の代表銘柄『じょっぱり』。津軽弁で「頑固者」や「意地っ張り」を意味する言葉です。
すっきり辛口の旨いお酒です。

そして、思ったよりも大きめのスルメ!

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購入すると、アテンダントさんが、ビニールからスルメを取り出し、ストーブの網で華麗な手さばきで焼き上げてくれます。

そして、細かく裂いて、元のビニールに詰めてくれます。

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この上ない贅沢な旅のおつまみの完成です!

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ストーブの燃える匂いとガタゴト揺れながら窓を流れる冬の景色。
そしてスルメを噛みしめながら地酒にほろ酔う…。

旅人をこれでもか!というほどに骨抜きにしてしまう至福の時を駆け抜けていきます。

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後で青森出身の同僚にこの話をしてみたら、「マヨネーズと一味(唐辛子)があったら最高だな」と言われましたが…、そうか、その手があったか…!!
でも、さすがにマイマヨネーズとマイ一味を持参する事は考えもしなかったな。

とはいえ、これだけでも十分に最高の一言に尽きますがね。

 

 

昭和で時を止めた駅「津軽五所川原駅」

 

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心ゆくまで贅沢な冬の列車旅を満喫し、いよいよ終点の津軽五所川原駅に到着します。

往復2時間ほどの至高のローカル鉄道の旅。
これは人気があるわけだ!

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ストーブ列車を堪能した後は、津軽五所川原駅もじっくりと観察してみましょう。

特筆すべきは、やはりその昭和レトロな佇まい。
時代は令和になったというのに、未だに昭和から時が経つのを忘れてしまったかのような、歴史を感じる風貌となっています。

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もちろん、外観だけでなく、待合室もまた昔懐かしい雰囲気漂う装い。

 

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そして待合室内の時刻表も見逃せないポイント

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漢数字で表記されている時点で十分珍しいですが、何よりも、数字のパネルを組み替えるでもなく、今どき手書きで改訂しているのが感涙ものです!

駅の佇まいだけでなく、中もまた時が経つのを忘れてしまったかのような、昭和タイムトラベルが堪能できる駅となっています。

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デジタルの波が一切押し寄せていないかのような、津軽五所川原駅。
どんなに時代が進んでいっても、是非この駅だけはこのまま時が経つのを忘れたままでいてほしいものです。

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ちなみに、すぐお隣のJR五所川原駅もまた、なかなか昭和モダンな佇まいで良いです。

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そして、目の前には、弦南バス五所川原駅前総合案内所がありますが、ここもまた津軽五所川原駅に負けない昭和レトロなバスターミナルとなっています。

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やはり、ここの時刻表もまた手書き改訂の模様。
今だからこそ、逆に新鮮さを感じる不思議な感覚に陥ります。

 

 

こうして、ストーブ列車だけでなく、駅のレトロさ、長閑な車窓風景と、最初から最後まで存分に楽しませてくれる津軽鉄道。
このイベント列車は、冬季のみでなく、夏には風鈴列車、秋には鈴虫列車と、季節の移ろいに合わせて実に様々な楽しみでもてなしてくれます。

青森の名物鉄道、是非その身で味わってみて下さい!

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リンク

 

『津軽鉄道株式会社』公式サイト
 『津軽鉄道株式会社/時刻表』
 『津軽鉄道株式会社/運賃表』

『六花酒造株式会社』公式サイト

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