日本最大の池・湖山池 ~池らしからぬスケールの歴史と伝承を楽しむ~
池、沼、湖…。これらの違いって何だろう?
私個人としては、単純に規模の大きさによるものと思っていました。
中でも池は「人工的なもの」と思っていて、自然にできたものが沼、そしてその沼の規模が大きくなったものが湖であると…。
今回は、そんな池、沼、湖の違いについて、根本から考えさせられるようなスポットについてまとめていきます。
湖山池の(雑な)概要 ~池沼湖の分類とは?~
鳥取県鳥取市。
この北部に『湖山池(こやまいけ)』というスポットがあります。
「池」という名称がつく水域においては、日本一の広さを誇ります。
地図で見ても、その広さには驚かれる事でしょう。
周囲18km、面積6.9k㎡もの規模を誇ります。
すぐ東の日本海側に位置する、あの有名な「鳥取砂丘」がすっぽり入ってしまうような広さ。
さらに、池には「青島」を始め、大小様々な島も点在しています。
…もう湖で良いんじゃないかな?
そう思われる方も多い事だと思われます。
そこで気になってくるのが、池、沼、湖。
これらの違いって、何なんだろうか?
調べてみました。
まず「池」。
池は簡単に言うと「地面が窪んだ所に水が溜まった所」とされており、通常は湖ほどの大きさではないものを指すようです。
自然に出来たもの、人工的なものといった所で区別はされず、慣例的には水深が5m未満の浅さである事となっています。
次に「沼」。
沼も池と似たようなものとなっていますが、最深部まで沈水植物(水草)が繁茂しており、湿地の一種となっています。
こちらも池と同様に、慣例的には水深が5m未満の浅さである事が定義づけられています。
また、池と沼が明確に区別出来ない場合もあり、池と沼を合わせて「池沼」と呼ぶ事も多いです。
そして「湖」。
池、沼でも説明した通り、水深が5m以上あり、植物が最深部まで侵入出来ないものと定義されています。
「泉」はどうなんだ?ともしかしたらお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、泉がこれらと明確に違う点は「水が地下から湧き出てきている」事でしょうか。
ちなみに、「湖山池」の平均的な水深は2.8m。
湖と定義される水深5m以上を満たしていない為、池に分類される事が分かります。
本当にでっかい水たまりがあるようなものでしょうか。
ただ、沼に分類されない理由についてまでは、私の調査力では不明です…。
大型魚類が生息していないからなのか、別の理由なのか…。
もしご存知の方がいらっしゃったら、ご一報いただけると幸いです。
湖山池は、かつて日本海に面した入り江湾となっていましたが、数回に渡る砂丘の発達で海と分離され、現在の形となったものとされています。
現在の湖山池が形成されたのは、弥生時代以降と言われています。
そんな事もあってか、この湖池山は、汽水性(海水と淡水が混ざった水質)の潟湖 ※ にも分類されており、もはや訳が分からない状況となっています…。
しかし、分類の仕方は様々あっても、この湖池山が他ではあまり見られないユニークな歴史を持つ水域である事は間違いありません。(←投げた…)
※ = 潟湖(せきこ):湾が砂州によってせき止められて形成された、水深の浅い水域。ラグーンとも言います。
湖山池の青島を歩く
概要の難しさはさておいても、実際に湖山池を目の当たりにすると、その規模の大きさには驚かされます。
「“池”とは名ばかりの湖なのでは?」
そうとしか思えない広大な水域。
池の中央南部には、「青島」という湖池山最大の島があり、他にも大小様々な島がちらほらと浮かぶ…。
池に島があるなんて、あまりにもイメージからかけ離れた光景。
しかし、我々が普段持っている“池の概念”を根本から覆してくれるようなこの湖山池。それだけでもここに訪れてみる価値はあるものだと思います。
青島には橋が架かっており、通行料等も掛からず、自由に行き来する事が出来ます。
ただ、この青色の橋が、周囲の水と緑と空の風景にマッチしており、爽快な気分にさせてくれます。
池の中の小島を歩くという、なかなか味わえない特別感を楽しみながら散策を続けます。
さすがは池という名が付くだけの事はあり、非常に波は穏やかです。 辺りに吹き付ける風の気持ちよさもあり、実に落ち着ける癒しの光景が広がります。 ここで休憩したり読書したりすると、凄く気持ち良いだろうな…。ただ、夏はだいぶ暑くはなりますが…。
青島内の散策路は整備が行き届いており、非常に歩きやすくなっています。 島には小高い山もあり、その山頂には展望台があります。登るのにそこまで難儀はしないと思いますが、思ったより高さがありますので、注意しましょう。
山頂の展望台からは、湖山池と鳥取市の街並み、そしてさらにその向こう側に日本海を望むことが出来ます。
地図からは想像もつかないような景色を楽しめる事でしょう。
弁当等を持参して、ここで食べるのも凄く良いだろうな。
湖山池の伝承
湖山池には、「長者伝説」の一つである湖山長者にまつわる伝承もあります。
湖山長者はこの辺り一帯で一番の大金持ちで、毎年のように近所の者全員をかき集めては、所有していた広大な田んぼの田植えを1日で済ませてしまう習わしがありました。
ある年、子供を逆に背負って歩く猿があぜ道を行き来するのを大勢が見とれてしまい、日没までに田植えが間に合わない状況となりました。その様子を見て、湖山長者はお気に入りの金の扇を持ち出し、太陽に向かって「一時の間戻ってくれ」と言うと、何と沈みかけていた太陽が再び昇りはじめました。これにより、無事日没までに田植えを完了させる事が出来ました。
しかし、翌日になって長者が田んぼに行ってみると、田んぼが消えており、代わりに大きな池が出来ていました。これを見た人々は、「太陽を呼び戻した罰が当たったのだ」と言い合いました。
そして、その池が後に湖山池と呼ばれるようになりました。
また、湖山池に点在する島の一つに「猫島」というものがあります。
琵琶湖の竹生島(ちくぶしま)の弁天宮を分社して祀っていますが、こちらも湖山長者にまつわる伝承があります。
かつて湖山長者が祈願していた薬師如来を祀る御堂に、浄西坊という者がお勤めをしており、ある時、目の光る赤毛の猫のミイラが仏様の足元にあるのを見つけました。
その夜、浄西坊は夢の中で、その猫が湖山長者に飼われていた事、田んぼが一夜にして池に変わった際に溺れ死んでしまった事、さらにその死骸が小島に打ち上げられてミイラになり、その為にこの小島が猫島と呼ばれるようになった事を告げられます。
猫は長者から信神する事を教わっていた為、動物でありながら仏になる事を許された為、この薬師如来にお仕えして人々に利益を授けたいとも言いました。
浄西坊は、以前御堂に住み着いて薬師如来に手を合わせていた赤毛の猫を思い出し、それが湖山長者の猫の霊で、今度はミイラとなって現れたのだと悟り、猫のミイラを丁重に薬師如来と共に祀りました。
これ以降、この薬師如来は「湖山の猫薬師」と呼ばれるようになり、この御堂の護符はネズミ封じに大変効くと言われるようになりました。
ただ規模の大きい池というだけでなく、それが形成されるまでの歴史、伝承等、実に興味深いエピソードが満載の湖山池。
是非その目、その足で体験されてみてはいかがでしょうか。
湖山池へのアクセス
鳥取駅のすぐ北西側に「鳥取バスターミナル」がありますので、そこで路線バスに乗車します。
バスの系統は「吉岡線」、乗り場は6番乗り場となっています。
鳥取駅前から青島公園までは約18分ほど、運賃は片道410円となっています。
乗り場については、こちらの「吉岡線」を参照ください。
■『一般社団法人鳥取県バス協会』
リンク
■『一般社団法人鳥取県バス協会』
■『日ノ丸自動車株式会社/路線バス時刻表』
湖山池は昔湖山湖とも呼ばれていました。もともと湖山の地名は小山と呼ばれていて小さい山がたくさんある場所でした(鳥取大学の周辺)古い資料を見ると湖山湖と書かれているものもあります。私見ですが湖山湖ではゴロが悪いので湖山池になったと思われます、湖と山と池、自然豊かな場所であることには変わりありません。