ゼロの頂へ!標高0mの山、秋田県・大潟富士
秋田県大潟村にある『大潟富士 (おおがたふじ)』。
ついに出た!脅威の標高0m!
他の追随を許さない、国内における低山の最高峰、いや最低峰の大潟富士についてご紹介いたします。
日本一低い山シリーズ、最終章の第6弾!
■日本一低い山シリーズ■
・『大阪・天保山 ~国内の代表的な低山を上る~』
・『蘇鉄山 ~大阪・堺市、一等三角点のある日本一低い山~』
・『日和山 ~「日本一低い山」の称号を奪還した震災復興のシンボルとも言うべき仙台市の低山~』
・『弁天山 ~徳島の日本一低い自然の山を登頂する~』
・『東洋一の低さ!?山口県萩市の火山『笠山』 ~見た目に反する大自然の浪漫を楽しむ~』
1・標高0m!脅威の低山『大潟富士』の概要
秋田県の男鹿半島の付け根辺りに位置する大潟村 (おおがたむら)。
その中央部辺りに『大潟富士 (おおがたふじ)』があります。
つまり、この大潟富士の頂上は、海抜0mである事を意味します。
山なのに標高0mとは、これ如何に?
と、お思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、これは大潟村の地域一帯が海抜0mより低くなっている為です。
この大潟富士は、頂上の高さが海抜0mになるようにつくられた築山である為、山なのに標高0mという、一見矛盾しているかのような事が実現出来ているのです。
富士山のちょうど1/1000の高さとなっています。
大潟“富士”という名称は、伊達ではありません!?
また、人工の築山である事から、一時は国土地理院から地形図の掲載を見送られていたようですが、現在は地形図に表示されています。国土地理院のお墨付きの低山という事になります。
しかし、「日本一低い山」というと、大阪の天保山や、宮城県の日和山などが真っ先に挙げられ、この大潟富士は若干マイナーな存在であるようにも思えます。
やはり、海面より低い土地に人工的に作られた非常に特殊な山である事と、高さそのものは日和山よりある事などが、一種のズルさにとられてしまう…のだろうか??
2・かつては国内第2位の面積の湖。大潟村の壮大な成り立ち
なぜ大潟村は海抜が0mより低くなっているのか?
それは、大潟村自体が、かつて『八郎潟』と呼ばれる大きな湖であった為です。
地球全体の気候変動の影響を受け、海面の上昇や下降で陸地の変形を繰り返しながら、約1万年の歳月をかけて、八郎潟の湖は形成されました。
八郎潟は、琵琶湖に次いで国内第2位の面積を誇る湖となっていました。
戦後の食料不足解消の為、1957年(昭和32年)に八郎潟干拓工事を開始。
日本の土木技術を結集、さらにオランダの技術協力を得て、世紀の大事業「八郎潟干拓」工事は進められました。
湖面積の80%が干拓地となるように計画され、まず、干拓地となる外周約52kmもの長さからなる堤防が建設されました。
堤防建設にあたって使用された岩石は、八郎潟の東側に位置する筑紫岳から採取。
築堤後、東側と南側に作られた排水機場より排水を開始。
そして、着工から20年の1977年(昭和52年)3月、約852億円の費用をかけて、八郎潟干拓地が完成しました。
面積17,239haの陸地を造るという壮大な工事の末、湖底が大地へと大変身を遂げました。
大潟村は、そのかつての湖底に誕生した村となっている為、海面より低い土地となっているのです。
ちなみに、大潟村が制定されたのは、工事途中の1964年(昭和39年)の事。
大潟富士は、そんな新しい大地に、1995年6月3日「測量の日」に完成しました。
大潟富士のすぐ隣には、『八郎潟干拓記念水位塔』というモニュメントが建てられています。
「人々はいつもこの頭上の高さに日本海の水面が広がっていることを忘れてはならない。」
というメッセージが記載されています。
このモニュメントの赤い球体の中央部が、かつての八郎潟の湖面の水位である事を示しています。
思ったよりも深いと見るべきか、浅いと見るべきか…。
そして、大潟富士の頂上の高さは、『八郎潟干拓記念水位塔』と同じ高さ、つまり、かつての八郎潟の湖面と同じ高さでもあります。そう高くない山ではあるものの、大潟村の広大な農地を見渡す事が出来る頂上。
まさに、その高さに水面が広がっていた事を想像すると、干拓工事いかに大規模な事業であったかを思い知る事となるでしょう。
その標高0mという小さな山は、ただのネタで作ったわけではない、壮大な大潟村の成り立ちの歴史が込められています。
3・地上の十字路『経緯度交会点表示塔』
大潟富士の北西部には、『経緯度交会点表示塔』というモニュメントがあります。
経度と緯度が10度単位で交わるポイントは、国内の陸上において、ここだけです。
一大事業によって現れた「地上の十字路」とも言うべき交点。
その成果を称えているかのようでもあります。
大潟富士からさほど遠くない位置にありますので、是非一緒に訪れてみてはいかがでしょうか。
ただし、この『経緯度交会点表示塔』にアクセスする場合、道順には十分気をつける必要があります!!
(画像はクリックorタッチで拡大できます)
しかも、道はあまり整備されていない砂利道となっていますので、速度もあまり出す事が出来ない状態となっています。
ちなみに、私は間違えて南側の道を行って、モニュメントを目前にしながら間違えた事を知り、そのまま反対側まで行ってから北側の道でアクセスし直しました。
(徒歩や自転車でも途中で水路を渡る事は出来ません!)
非常に面倒くさい事になりますので、注意しましょう。
4・桜の時期にお勧め!『桜並木と菜の花ロード』
大潟富士の目の前を走る県道298号線は、『桜ロード』と呼ばれており、北西の方に進んでいくと、約11kmにも渡って桜並木と菜の花が続く『桜並木と菜の花ロード』があります。
見頃に合わせて「桜と菜の花まつり」が、ホテルサンルーラル大潟近くの多目的広場にて開催されます。
桜と一緒に大潟富士も合わせて見に行くのも良いでしょう。
こちらの記事も是非合わせてご覧ください!
5・アクセス
大潟富士には、JR八郎潟駅より『マイタウンバス』にて移動する事が出来ます。
ただし、運行本数はかなり少な目となっていますので、乗り遅れには十分注意しましょう。
運賃は片道200円です。
また、大潟富士周辺は、本当に何もありません。
ただ桜並木と農地が広がるのみで、自動販売機すら設置されていません。
軽食や飲み物を用意する等、バスの待ち時間対策を講じておきましょう。
リンク
■『大潟富士/大潟村公式サイト』
■『日本一低い山 大潟富士/大潟村公式ブログおおがた散歩』
■『南秋地域広域マイタウンバス』
0mにしては高い山だと思いましたがw
干拓地とは思いもよりませんでした
面白い由縁の土地ですねぇ
元湖底という干拓地だからこそできた標高0mという常識外れの山。
ただのネタかと思いきや、非常に興味深い成り立ちと意味が込められた、奥が深い山でした!