本州最東端への旅1 (2016年7月) ~とどヶ崎へのバスと徒歩での移動方法~
本州最東端の町、宮古市。
(沖縄県の宮古島市ではありませんよ。岩手県の宮古市です。念のため)
そこには本州最東端の岬である「とどヶ崎(魹ヶ崎)」があります。
しかしこのとどヶ崎、車を利用しても最寄の駐車場(姉吉キャンプ場)から1時間ほど遊歩道(山道)を歩かないと辿り着く事ができない場所であり、本州四端の中では最も到達難易度が高い場所でもあります。
一応、バスを利用しても近くまで移動する事は可能ですが、2016年7月現在、バス移動はかなりの制限が課せられており、難易度はさらに上昇します。
詳細は後述しますが、簡単に説明すると、とどヶ崎最寄のバス停は遊歩道入口からさらに30分離れた場所に位置しており、その上、この停留所からの帰りのバスは無いも同然の状況であり、宮古市へ戻るバスが発車する停留所には、さらに1時間ほど山中を歩いて移動しなくてはならないという事態に陥ってしまう為です。
宿泊施設も近くにはなく、宮古市からは車でも片道1時間程度の時間は見積もった方が良い為、タクシーを利用するのもあまり現実的とは言えません。
こうなると、もはやレンタカーを利用するしか方法はないように思えるかもしれません……が、私はバスと徒歩を駆使してとどヶ崎へ行ってくることが出来ました。
しかも決行日は雨も降ってすらいましたが、それでも無事に宮古市へ戻り、その後さらに宮古市の観光スポットである「浄土ヶ浜」にも行くことができています。
今回は、とどヶ崎へのバスと徒歩でのアクセス方法についてまとめてみようかと思います。
正直あまりお勧めはしません。
しかし、レンタカーを使わずに旅費をなるべく安く抑えたいという方や、体力に自身のある方、話のネタにでもしてみたい方は試してみるのも良いかもしれません。
ただし、意外と急な坂道の上り下りを含めた延べ16kmほどもの道のりを歩かないといけませんので、それなりの覚悟は必要です。
宮古駅前からバスで移動する -あまりに制限されたバスのダイヤをどう克服するか?-
とどヶ崎へバスで行く場合、最寄の停留所は「姉吉(あねよし)」となります。
姉吉へは、宮古駅前の2番乗り場より発車する「石浜」行きのバスに乗車します。
しかし、バスの時刻には細心の注意を払う必要があります。
まずは、あまりに制限されたバスのダイヤを調べ、とどヶ崎までの移動やバス停までの移動などを予め調べておかないと、後々厄介な事になりますので、ここで整理しておきましょう。
■『宮古駅前―重茂(おもえ)―石浜 バス時刻表』※PDFファイル
この時刻表の2ページ目が姉吉を通るバスの時刻表となっていますが、宮古駅前発の姉吉を通るバスは、一日最大で3回しかありません。
しかし、何よりも問題なのは、帰りです。
姉吉から宮古駅前に行くバスは、最大でも朝の2つしかありません。
(午後の2つは重茂車庫が終点となっていますので、選択肢から外れます)
10:05なら毎日運行しているようですが、宮古駅前からバスで移動してきて、「姉吉」停留所に着く時間が09:43。
ここからとどヶ崎への往復をたったの20分強で済ますのは、完全に不可能です。
となると、宮古駅前に戻るバスに乗る為には、「里」という停留所まで徒歩で戻る以外方法がなくなってしまいます。
「姉吉」停留所から「里」停留所までは、およそ5kmほど歩かなければなりません(徒歩約1時間)。
ここまでの情報を考慮に入れて、とどヶ崎への往復時間を計算してみると、
「姉吉」停留所 ~「とどヶ崎」 …徒歩片道およそ90分、往復で3時間程度
「姉吉」停留所 ⇒ 「里」停留所 …徒歩およそ1時間
単純な移動時間だけで計4時間。
もちろん、実際にはとどヶ崎にてちょっとした息抜きや雄大な景色を少しは楽しまなければ、折角辿り着いた意味があまりなくなってしまうので、短くても15~30分は余分に見ないといけないでしょう。
さらに、このとどヶ崎周辺は思った以上に山岳地帯でもありますので、道中は坂道の連続でもあります。
下りはともかく、上りは進行スピードが落ちてしまうでしょう。
以上の事から、「姉吉」停留所からとどヶ崎へ往復し、「里」停留所へ向かう時間は、トータルで5時間程度は見ておいた方が良いでしょう。
急ぎめでも4時間半ほどは見るべきです。
ここで改めてバスの時刻表を見てみると、宮古駅前を08:30に出発するバスに乗り、「姉吉」に着くのが09:43。
そこからとどヶ崎へ向かい、「里」停留所に移動する時間はトータルで4時間半~5時間。
結構急げば13:57「里」発のバスに乗れますが、無理のないペースで移動を考えると、次の16:02「里」発のバスに乗るのが良いでしょう。これならさらに1時間は時間に余裕ができますので、比較的ゆっくりと移動する事が可能となります。
ただし、この16:02発が宮古駅前に行く最終便(!)。これを逃すとアウトです。十分に注意すること。
つまり、宮古駅前からとどヶ崎方面へ向かうバスは、実質08:30の便のみ。
帰りは「里」停留所から13:57発か16:02発のバスに乗って宮古駅前へ戻る。
これに絞られます。
(石浜や重茂の集落部に民宿があるようですが、それでもバス停から結構離れていたり、バスが休校日運休だったりと、確実性に欠けます)
(また、「Google マップ」上では、「姉吉」停留所付近に「民宿とどヶ崎荘」がありますが、実際に問い合わせてみたところ、現在は営業していないとの事)
という事で、08:30「宮古駅前」発のバスに乗ってとどヶ崎へ向かう事に。
もっと良い方法をご存知の方がいらっしゃいましたら、下部コメント欄にて御一報いただけますと幸いです。
用意しておきたいもの
あまり大したものは必要ないかと思いますが、道中は自動販売機も売店も一切ないものとみてよいでしょう。
(というか、本当に自販機すらなかったような気がする)
出発前に最低限飲み物は用意しておきましょう。
食べ物もあるとなお良いでしょう。
何しろバスで移動する場合は、勾配の急な坂道を含めた道をトータル16kmほども歩かないといけないので、途中で空腹になること必至です。
とどヶ崎へはちょっとした山道を歩く必要がありますが、勾配が急な箇所は最初の2、3割程度で、後は比較的平坦なルートが続きます。
服装は本格的な登山用のものである必要は全くありません。
ただし、往復2時間は歩くことになりますので、最低限動きやすい格好にはしておきましょう。
ハイヒールやサンダルなどはまず推奨しません。
また、夏場は帽子やタオル、着替えも用意しておくのがベスト。
天候が優れない時は、レインコートもあると良いでしょう。
一応傘でも十分対処可能ではありますが、やはり両手が使える状態で移動するのが一番です。
また、たまに熊が出没するらしいです。
登り口にも「熊に注意」の看板が立てられています。
熊避けの鈴などを用意しておくのが無難。
実際に、遊歩道を歩く多くの方が熊鈴をぶら下げていました。
ちなみに私が用意した鈴はコレ。
熊の頭はネジ式になっていて、必要な時以外はこれを緩めて外す事によって音を出さなくすることができるという優れものです。
用意しておきたい物のまとめ
持っておきたい物の推奨品
・飲み物
・食べ物
・熊鈴
・タオル(夏場は特に)
・着替え(夏場は特に)
・レインコート(一応傘でも代用は可能です)
推奨の服装
・動きやすい格好であれば特に指定はありません
・靴は舗装されていない山道を長時間歩ける物を推奨
熊撃退スプレーは……いるかというと、非常に微妙なところです。
熊の目撃情報があるとはいえ、そんなに頻度が高くないらしい事、休日であれば以外と多くの人が行き来する事を考慮に入れると、熊鈴でも十分のような気がします。
スプレー自体の値段も結構しますので、あまり山道を歩かないような方ですと、用意するのに躊躇する事でしょう。
尤も熊鈴を持っていても熊と遭遇する時はするようですが、何もないよりはよっぽどマシでしょう。
複数人のグループで行動するなら、万が一遭遇した時の為に一人は熊撃退スプレーを所持しておいた方が安全、といった具合でしょうか。
勿論、一人で行動する場合でも、所持品に余裕があるようであれば、念のために持っておくのがより安全です。
宮古駅前から姉吉までのバスでの移動風景
出発当日。
08:30発の「石浜」行きバスの乗るべく、宮古駅前にてバスを待ちます。
この日は朝から小雨が降っており、ハイキング日和とは言い難い状況に。
出だしからして先が心配になってきますが、行くと決めた以上は雨だろうが行ってやると開き直る。
出発5分前ほどになって、「石浜」行きのバスが到着。
これに乗り込み、出発を待ちます。
行き先が行き先だけに運転手さんが「どちらまで?」と訊ねてきますので、「姉吉です。とどヶ崎に行きたいので」と伝える。
すると運転手さんは「帰りはどうされます?」と聞いてきますので、「「里」停留所まで歩きます」と答える。
やはりバスだとド不便だという事をちゃんと把握しているかの確認をとっているのでしょうから、こちらもそれを知っての上で行く事を伝えます。
そしていよいよ出発。
この日、私以外にバスでとどヶ崎に行こうとしている猛者がもう1人。
出発して10分程度すると、進行方向左手奥の方に、とどヶ崎がある重茂半島の意外と高い山々が見えてきます。
あの山の向こうにとどヶ崎が…、と思うとちょっと気分が高揚してきます。
これで晴れてさえいればなぁ。
出発から15分ほどでバスは重茂半島西部の海岸沿いを走ります。
雨とは言え、これはこれで良い景色だ。
重茂半島の山中をバスはどんどん進んでいきます。
しばらくすると、集落が見えてきます。
バスの運手主さん、停留所付近の住民の方々に新聞を渡しながら進んでいきます。
こういった風景もまたなかなか良いもんだ。
他では味わえない。
重茂の集落を抜けると、バスは再び山道を走っていきます。
そしてこれが後で歩くことになる道でもあります。
狭く、曲がりくねった道だ。
そして09:43、「姉吉」に到着します。
宮古駅前まらここまでの運賃は、¥790。
降りる際、一応バスの運転手さんにこう聞いてみる。
「この辺、熊って出るんですか?」
すると「たまに出ます」との答えが。
やっぱり出るときは出るのか。
一応熊避けの鈴は持ってきたものの、若干の不安を持ちながらバスは去っていきました。
それにしても、いかにも山の中のバス停とも言うべき寂れた佇まいだ。
といってもこの雰囲気は結構好きだったりしますが。
しかし、選挙ポスターが目立つのがちょっと残念なところか。
とどヶ崎の登り口へ -集落と大津浪記念碑-
↑「姉吉」停留所から「とどヶ崎」登り口までのルート
そしてとどヶ崎への登り口へ向かうべく、次は道を歩いていきます。
「姉吉」停留所から登り口までの距離は、約1.8km。
結構急な坂道を下っていきます。
これ、帰りは辛そうだ。
しばらく歩いていると、集落が見えてきます。
雨だからか、あまりに静か。
静か過ぎてちょっとだけ不気味な気分になりそうだ。
この集落唯一の民宿であった「とどヶ崎荘」。
ここで振舞われるいくら料理が絶品だそうですが、残念ながら現在は営業をしていないとの事。
(実際に電話で問い合わせてみた)
期間限定でしか営業していないのか、それとも完全に営業停止しているのか……? もしここが営業していれば、前日の夕方に姉吉まで移動してここで1泊し、翌朝とどヶ崎に行って10:05姉吉発のバスに乗れたのになぁと思ったものの、やってないものはしょうがない。
またしばらく歩いていると、進行方向左手側に石碑が見えてきます。
東日本大震災後に話題になった“此処より下に家を建てるな”の石碑「大津浪記念碑」です。
1933年(昭和8年)の昭和三陸地震による津波によって村が壊滅的被害を受けた際に立てられた石碑で、実際にこの教えを守ったおかげで先の震災の際に津波の被害から免れています。
東日本大震災の津波は、この石碑の50mほど手前にまで迫っていたようです。
やはり先人たちの教えは偉大であるということか。
この石碑からまた急な坂道をどんどん降りていきます。
しばらく下り続けると、進行方向右手側に「姉吉キャンプ場」が見えてきます。
車で来た場合は、ここがとどヶ崎の最寄駐車場となります。
ここから先は歩いていくしか方法がなくなりますので、ご注意を。
キャンプ場のさらに奥の方には入り江があります。
その入り江の向かい側がとどヶ崎への登り口となっています。
ようやくここからがスタート地点。
登り口前にはトイレがあります。
トイレは、ここを過ぎるとゴール地点であるとどヶ崎の灯台までありませんので、ここで済ませておきましょう。
そして、いよいよとどヶ崎への山道を歩いていきます。
続きはコチラ
■『本州最東端への旅2 (2016年7月) ~とどヶ崎と灯台内部(特別公開)にて~』
■『本州最東端への旅③(2016年7月) ~とどヶ崎からの帰り(これからが本番)~』
リンク
■『宮古市/トドヶ崎』
■『宮古旅手帳 ―みやこへおでんせ。― /トドヶ崎』
■『岩手県北バス』
■『宮古駅前―重茂(おもえ)―石浜 バス時刻表』※PDFファイル
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