襟裳岬への旅 ~列車とバスを駆使して行く旅・後編~
北海道『襟裳岬』への公共交通機関を駆使した旅、後編。
前回は、札幌から襟裳岬と、旅館みさき荘での様子についてお伝えしましたが、今回は、みさき荘を出発してから浦河町での寄り道、そして札幌へと戻る様子についてまとめます。
今回も私のグダグダっぷりが発揮されております…。
■襟裳岬シリーズ■
・北海道・襟裳岬 ~圧倒的にして壮大な光景と歴史を体験せよ!
・襟裳岬への旅 ~列車とバスを駆使して行く旅・前編~
・襟裳岬への旅 ~列車とバスを駆使して行く旅・後編~
朝の襟裳岬、最高のひと時からの旅立ち
旅館の温かなおもてなしに感動して明けた夜。
この日(9月25日)は、襟裳岬に昇る朝日を是非見てみようと、朝早く(05:00頃だったかな)に起きて岬へと繰り出します。
何て優しく身に染み込んでくるような光なんだ…!
夕陽も素晴らしかったものですが、朝陽も全然負けていない。
そして06:00頃だったでしょうか。
辺りにサイレンが響き渡ったかと思うと、海の方から一斉に船が出航する音が。
東側の町の方を見てみると、漁港から一斉に漁船が沖へと駆けていく光景が。
漁開始の合図だったか。
写真を撮り遅れたので、船が少ないように見えますが、実際はもっと何十隻はあろうかという漁船の群れが見えました。
遠くから見ているとはいえ、なかなかの光景でしたよ。
朝から大満足の光景を目にし、部屋に戻って出発する準備を整えようかとしていた時。
旅館のおっかさんが部屋に見えたかと思うと、昨晩の貝料理に続き、何とおにぎりとお茶まで用意してもらえました…!!
本当にありがとうございました…!!
出発の準備を整え、旅館を後にする時が来ました。
今にして思うと、本当に名残惜しいな。
ちなみに、部屋は番号ではなく、花の名前になっています。
私が泊まった部屋は「すみれ」。
何か妙な可愛らしさがあるな。
私の不手際があったにも関わらず、あまりにも嬉しい対応が本当に嬉しかった。
また機会があったら是非利用したいと思う。
最後に、もう一度だけ展望所から朝の襟裳岬の光景を見ていきます。
絶対にまた来よう。次は、今回叶わなかったアザラシの姿を見てみたい。 そう思いながら、07:43発の様似方面へ向かう路線バスに乗り込みます。 しかし、岬近辺のバスの車窓も本当に素晴らしいな。
もう朝から満足しっぱなしだ。
浦河町までの道中/「えりも駅」の謎
路線バスで「様似駅」に向かう途中、「えりも駅」という停留所を経由していきます。
現在は勿論、過去に一度もここに鉄道が走っていた事はなかったんじゃ?
そう思って後で調べてみると、実は日高本線の「様似駅」から、旧広尾線の「広尾駅」間を、“日勝線”という鉄道路線で結ぶ計画があったそうだ。(「日高」と「十勝」を結ぶ事からの命名)
旧広尾線は、帯広駅~広尾駅を結ぶ路線でしたが、1987年に全線廃止。
もともと広尾駅~えりも町にかけて、険しい断崖が連続している為、当時の技術的にも広尾駅を終着駅とせざるを得ない状態でした。
(航空地図で広尾町~えりも町にかけての地形を見てみると、海沿いの大部分が険しい崖になっているのが分かると思います)
そして広尾線の廃止が決定されると、いよいよえりも町への鉄道延伸の望みは絶たれてしまう事となり、日勝線は幻の鉄道路線となってしまいました。
ではなぜ「えりも駅」という停留所名が使用されているのかというと、鉄道に先行して国鉄バス日勝線がえりも町を走るようになった為、これが「えりも駅」という名称につながりました。
主にバス路線として、鉄道駅と同等の業務を行う駅舎(バスの駅)の一つであったので、「駅」という名称がつけられています。
(バス駅とバスターミナルでは意味合いが異なるようだ)
開業当時は「幌泉駅」と呼ばれ、駅前にもレストランや喫茶店などが並ぶ賑やかな場所だったそうですが、襟裳岬を含むの観光最盛期ともなると、交通渋滞緩和とワンマン化に移行する為に、300mほど離れていた当時の駅舎の場所を、現在の位置に移転。
昭和45年(1970年)10月1日に町名が「幌泉町」から「えりも町」に改称され、それにならって駅名も「えりも駅」に改称されました。
しかし、その後は利用者数がどんどん減少していき、営業窓口は1998年8月末をもって閉鎖。
2008年に、現在のような待合室のみの簡素な無人の停留所スタイルの駅舎に建て替えられる事となります。
2016年にセブンイレブンが建設され、駅舎はさらに数メートル移転されて、現在の位置に至るようです。
話がだいぶ脇道に反れてしまいましたが、なかなか面白い経歴の持ち主の「えりも駅」の紹介でした。
08:35頃、バスは様似駅に到着します。
このまま北上を続けますが、なぜか急に浦河町で寄り道してみたいと思い、そこで一旦降りて、高速バス『ペガサス号』で一気に札幌へ行こうと画策します。
様似駅から浦河町への移動手段は二つ。
①09:00発の路線バスにて「浦河5丁目」~「役場前」までの何れかの停留所で下車する。
②09:02発のJR日高本線の代行バスにて「浦河駅」まで移動する。
ちなみに、「役場前」と「浦河駅」はほど近い場所に位置しています。
さらに、代行バスの方が若干移動時間が短く、運賃も安く済む事が分かりました。
◇代行バス=様似駅~浦河駅:440円、所要時間:28分/路線バス=様似駅~役場前:590円、所要時間:33分 ※2020年3月時点
よって、代行バスで「浦河駅」を目指す事にします。
ちなみに、代行バスはあくまで鉄道の代わりにバスを利用しているものである為、駅にて目的駅までの切符を購入しておきます。
様似駅内にて切符を購入しますが、硬券でも磁気券でもない、“裏が白い切符”となります。
これはこれで良いですよね。
浦河町にて/うっかりヒヤヒヤものの移動をこなす
そして09:30頃。代行バスは「浦河駅」へと到着します。ここで下車。
代行バス「浦河駅」停留所は、路線バスの「役場前」停留所に併設されています。
高速バス『ペガサス号』も、この停留所を経由して札幌へと向かっていきます。
まずは『ペガサス号』の時間を調べようと、時刻表を見るも……。
ここでまたしても大誤算が待ち構えている事となります。
「札幌駅前(高速ペガサス号)」の項目に目をやると…
赤文字で「前日までの予約が必要です。必ず静内営業所へご予約願います」との記載が……!!
……何て事だ…!!
予約制だなんて、全然知らなかった…!!
それもそのはず、私が高速ペガサス号の存在を知ったのは、Yahoo!路線情報のスマホアプリ「Y!乗換案内」で時刻を調べていた時。
このアプリでは、時刻の検索は出来ても、それが予約制であるか否かは、地方の路線だと分からない事が多いのです。
これまた痛恨の大誤算…!!
次の静内駅行き代行バスは…!?
調べてみると……、浦河駅を13:13発という、とっても素敵な検索結果が出てきました。
この日の内に新千歳空港から名古屋へと帰る段取りでいこうとしていましたが…、これでは19:20発の飛行機には到底間に合わない…!!(新千歳空港駅には19:27着…)
これはもうバス会社に電話して、これから何としても乗りたい事を伝えて、当日予約にしてもらうしか方法がない。
09:50発はさすがに早すぎるので、その次の12:00発のペガサス号に何としても乗ろうと、道南バス静内営業所の連絡先に電話をします。
すると、「12:00発の便だと、現時点で空きがあるので乗車しても大丈夫です」との回答をいただきました。
……良かった~~…!!
危うく帰りの飛行機に乗れなくなるところだった…!
「次回から前日までの予約をお願いしますね」と注意され、「申し訳ありません!!本当にありがとうございます!!」と詫び感謝を伝えて、何とかペガサス号乗車を確保しました。
しかし…今回、今までと比べるとあまりにもグダグダだな…。
旅館のチェックイン日を間違える、高速バスの予約が必要だと知らずに乗ろうとする…。
ちなみに、襟裳岬への旅の出発前日の札幌LIVEのチケットも、家に忘れたまま出発して、慌てて取りに帰って、ギリギリ飛行機に間に合った、何て事もあったな…。
心臓に悪い、今回の旅…。
とはいえ、これで札幌への移動は問題なくこなせる事になったので、12:00まで浦河町にて過ごす事にします。
役場前停留所のすぐ後ろには、その名称通り、浦河町役場があります。
浦河町は、国内有数の競走馬の生産頭数を誇っており、町内のあちこちでサラブレッドの牧場が広がっています。
町役場の前には、1989年に開催された第44回国民体育大会馬術競技会を記念した乗馬象があります。
障害物を飛び越える瞬間の疾走感溢れる像です。
隠れた馬好きの私としては、この浦河町をはじめとする日高地方、かなり好きだな。
そして、2015年の土砂災害以降、運休が続いて復旧の目途が立たないまま廃止を迎えようとしている、日高本線の駅、「浦河駅」が、すぐ道路を挟んだ向かい側にあります。
まだ現役ではあるものの、何年も列車が走る事はなく、線路は錆びてしまっています。
ラストランの宣言もそれを見る事もなく、人知れず消えてしまうような最後は、本当にもの悲しい。
駅の裏手の急斜面には、芝生が馬状に切り取られ、その下には「ウミノマキバオー」という名前が。
平成6年(1994年)に名称を募集し、当時の浦河町堺町小学校1年生の女の子が命名し、採用されたもの。
ちなみに、少年ジャンプに『みどりのマキバオー』という漫画がありますが、こちらは平成8年に連載が開始されたもの。
したがって、パクリでもなければオマージュでもない、完全オリジナルである。との事だ。
すぐ反対側には、浦河港が広がります。
広々としていて、穏やかな港湾です。
南東にしばらく進んでいくと、浦河神社という立派な神社が見えてきます。
御祭神は保食神(うけもちのかみ)、大物主命(おおものぬしのみこと)、市杵嶋姫命(いちきしまひめのみこと)の三柱。
毎年9月15日が浦河神社の大祭日ですが、近年は祭日に近い土・日に行われるそうです。
宵夜祭(前夜祭)と本祭があり、本祭では、トラック10台ほどに神輿や神具を乗せて、総代や氏子たちとともに町内を巡るという神輿渡御が行われるようです。
本殿は割と高い位置にあり、けっこうな段数の階段を上らないといけませんが、海を見渡せるなかなかの景色となっています。
浦河神社の目の前にあるガソリンスタンドには、なぜか眼鏡をかけた二宮金次郎像が。
なぜガソリンスタンドに?と、色々疑問点が湧いてくるユニークさ。
これはこれで面白いと思う。
さらに、浦河町には、大正7年(1918年)に設立された、北海道で最も古くから現存する映画館『大黒座』があります。
佇まいがもうすでに良い感じ。
本当なら映画の一本でも見ていきたい所ですが、時間がそれを許してくれない。
でも良いかもな。
良き映画館を巡る旅。
そして、少し早いですが、今の内に昼食を取ろうと、食事が出来るお店を探します。
この浦河町、『かつめし』というご当地グルメがあるとの事で、それが食べられるお店の一つ「くい処 東海」に行ってみる事にします。
浦河のソウルフードという『かつめし』。
醤油ダレのさっぱりしたかつ丼で、今までありそうでなかったタイプのかつ丼となっています。
揚げ物なのにさっぱり食べやすい、なかなかの美味しさ。
しかし、美味しいと思ったご当地グルメって、何でいつも自分の住んでる場所から遠い所ばかりにあるんだろうな…。
12:00が近づいてきたので、役場前停留所に戻ります。
そしてやってきた緑色の高速リムジンバス『ペガサス号』。
札幌方面は予約制ではありますが、座席は自由となっています。
静内駅まで色々と停留所を経由していきますので、人数が溢れて乗車できない事態を防ぐ為の予約制だと思われます。
とりあえず、無事に乗る事が出来てホッとしました。
これで札幌駅前着時間は、15:40頃。
これなら、余裕をもって新千歳空港に移動する事が出来ます。
本当にヒヤヒヤする旅だった…。
何とか無事に札幌駅前に到着し、空港へと向かって最後の夕食に、新千歳空港内の『えびそば一幻』のラーメンを食べる事にします。
…3日連続のラーメン。(札幌LIVEの夜にもラーメンを食べていた)
でも、ここのラーメン、えびの風味がしっかり効いてて美味しいんですよね。
何となく玉子を追加トッピングしてみたら…通常でも半分入っているのを完全に忘れていて、1個半の状態に…。
最後までグダグダな襟裳岬の旅となりました。
襟裳岬の旅のまとめ
ここまで、襟裳岬と、そこへの旅の様子についてお届けしてきました。
いつもに増してグダグダな旅とはなったものの、結果的には全てが面白く、楽しい旅路であったと思います。
何よりも、襟裳岬での感動の体験の数々。
これは一生忘れる事のない旅の一つになる事は間違いありません。
列車とバスを駆使して行く、決して楽とは言い難い道のり。
しかし、道中は、北海道の雄大な光景に何度も魅了され、終わってみればあっという間です。
レンタカーであっても、アクセスのし難さがネックとなる襟裳岬。
しかし、それを超えた先に待ち受けている光景は、面倒な思いを完全に消し去ってしまうほどの壮大さである事でしょう。
北海道南の先端部での感動体験、北海道を語るなら一度は訪れておきたい、重要な岬を是非お楽しみ下さい。
リンク
■『ジェイ・アール北海道バス』
■『高速ペガサス号・運賃・時刻表/道南バス株式会社』
■『みさき荘/風のまち「えりも」観光ナビ』
■『旅館みさき荘/北海道優良民宿・旅館グループ』
この記事へのコメントはありません。