碌山(ろくざん)美術館 ~美術館そのものが芸術の傑作美術館~
彫刻家はかなしく日本で不用とされた。
萩原守衛はにこにこしながら卑俗を無視した。
單純な彼の彫刻が日本の底でひとり逞しく生きてゐた。
―高村光太郎―
長野県安曇野(あづみの)市の、碌山(ろくざん)美術館。
安曇野市は松本市のすぐ北側に位置し、穂高(ほたか)駅から徒歩5~10分ほどの場所にこの美術館があります。
「東洋のロダン」とも呼ばれ、日本近代彫刻の先駆けとなった彫刻家・荻原碌山(本名・荻原守衛-もりえ)の個人美術館で、主に氏の作品や資料を保存・公開を目的とし、1958年4月に30万人の寄付と支援によって開館。
月並みな表現ですが、大胆かつ繊細な彫刻の数々が素晴らしく、特に重厚さの中に柔らかさすら感じさせる、重要文化財指定の作品≪女≫は一見の価値ありです。
碌山館の裏には、肺が破れて一升分の血の塊を吐いたという、氏の壮絶な最後がうたわれた詩碑があり、これもまた深く印象に残ります。
他にも留学期のデッサンや解剖学研究、油彩画なども展示されており、彫刻のみならず絵画的にも優れた腕前をしているのが凄いところ。
そして、碌山と関係の深い芸術家たちの作品も併せて展示されています。
小規模ですが、意外と充実した作品の数々を堪能することができる美術館です。
そういった作品群のみならず、この碌山美術館の敷地内のアーティスティックな雰囲気は、これだけでもこの美術館に足を運ばせた甲斐があったと唸らせてくれます。
ツタに囲まれたレンガ造りの碌山館、心安らぐ館庭の木々、暖かな木洩れ日…。
もはやこの美術館そのものが芸術だ。
木々が色づく紅葉の季節は、特に印象的です。
レンガ造りの建物を覆いつくすように青々と茂るツタが深紅に染まり、青空との競演を見せるその光景は、いつか見た映画や写真の世界に入り込んだかのよう。
この建物と館庭のみを目的に訪れるのも大いにアリな楽しみ方だろう。
美術館ならではの静寂さと芸術的空間に、是非とも癒されてみてはいかがでしょうか。
■碌山美術館■
開館時間:
3~10月/09:00~17:10
11~2月/09:00~16:10
(最終入場は閉館30分前まで)
休館日:
11月~4月/月曜日、祝祭日の翌日、年末年始(12月21日~31日)
5月~10月/無休
入館料:
個人一人
大人:700円、高校生:300円、小・中学生:150円
団体(20人以上)
大人:600円、高校生:250円、小・中学生:100円
●碌山美術館公式サイト: http://www.rokuzan.jp/
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