国内最遠の楽園、小笠原諸島への旅 ~1.小笠原への旅のススメ・ガイド~
東京の竹芝港から船で24時間かけて行くしか方法がない、ある意味国内で最も遠い場所にある島々、小笠原諸島。
年間を通して温暖な気候が続く、東京都に属する遥か南の楽園。
あまりに美しい海、空、山。大自然の魅力を存分に味わえる小笠原について(大雑把に)まとめていきます。
ただ良い点ばかりを羅列しても何なので、難点についてもまとめています。少しでも参考になると嬉しいものです。
■小笠原諸島への旅シリーズ■
・『国内最遠の楽園、小笠原諸島への旅 ~1.小笠原への旅のススメ・ガイド~』
・『国内最遠の楽園、小笠原諸島への旅 ~2. 旅の準備/東京⇒父島への船旅(1~2日目)~』
・『国内最遠の楽園、小笠原諸島への旅 ~3. 父島半日バスツアー+諸々(2日目)~』
・『国内最遠の楽園、小笠原諸島への旅 ~4. ドルフィンスイム ―イルカと泳ぐ―(3日目)~』
・『国内最遠の楽園、小笠原諸島への旅 ~5. 母島弾丸ツアー ―4時間で母島最南端と島北部を往復する・その1― (4日目)~』
・『国内最遠の楽園、小笠原諸島への旅 ~6. 母島弾丸ツアー ―4時間で母島最南端と島北部を往復する・その2― (4日目)~』
・『国内最遠の楽園、小笠原諸島への旅 ~7. 父島最後の山と海へ、出航前のカフェ巡り (5日目)~ 』
・『国内最遠の楽園、小笠原諸島への旅 ~8. 盛大に見送られる出航、感動のフィナーレ(5、6日目)~』
小笠原諸島の概要
年間を通して温暖な亜熱帯気候に属する小笠原諸島。
2011年6月にユネスコ世界自然遺産に登録され、2018年には、太平洋戦争後のアメリカ統治から日本に返還されて50周年という節目を迎えました。
東京23区から南南東へおよそ1,000kmという、遥かなる海の向こう側に位置しており、民間人が居住するのは父島と母島の2島のみ。それ以外は全てが無人島となっています。(自衛隊等の公務員が常駐する硫黄島や南鳥島を除く)
父島が本土(東京)との主な玄関口となっており、現在の父島へのアクセス方法は、旅客船「おがさわら丸」で片道24時間かけて移動するしかありません。
(ちなみに、小笠原に空港を建設しようという運動もあるようですが、まだ具体的な話は決まっていないようです)
どこまでも続く大海原に囲まれた小笠原諸島は、それ故に文明による汚染も非常に少なく、あまりにも美しい海、山々、そして星空を楽しむ事が出来る場所。
クジラやイルカを始めとした海の動物たちを間近で楽しむ事ができ、陸地ではトレッキングが楽しめたり、夜には満天の星空を鑑賞出来るなど、多くの魅力が満載の島となっています。
また、小笠原諸島は、かつて一度も大陸と陸続きになった事がない、海底火山の活動によってできた島です。(これを海洋島と言います)
その為、この島でしか見る事が出来ない植物も多数存在します。
「タコノキ」をはじめとした、独自に進化を遂げた固有種が多い、貴重な島でもあります。
まさしく「この場所でしか楽しめない」事が実に多く存在するユニークな島、それがこの小笠原という場所なのです。
小笠原諸島への旅が困難な理由
これだけ魅力的な要素が満載の小笠原諸島。それなのに、行った事があるという方は、自分の身の回りの人にはあまりいないはず。
知名度は高いはずなのに、行った事がない人が多い。
一体なぜなのか?
それは単純に“小笠原諸島へ行く”という行為そのものがまず難しいという事が挙げられるでしょう。
下手に海外旅行へ行くよりも、難易度が高い場所。それが小笠原諸島への旅というものなのです。
以下に困難な理由を(独自に)まとめてみました。
1.6日間の休暇を確保する必要がある ※
まず、これが小笠原諸島への旅を躊躇させる最たる理由になると思われます。
先述した通り、小笠原諸島・父島へは東京の竹芝港から出航する「おがさわら丸」でしかアクセスする事が出来ません。
父島への渡航時間は、ちょうど24時間。往復に48時間。そして、おがさわら丸は1隻しかありません。
移動だけでも丸2日間の時間が必要となり、さらに、おがさわら丸は父島にて3泊停泊します。当然、その間は東京へ戻る事は出来ない為、どうしても父島で3泊4日を過ごさなくてはならなくなります。
船での往復2日間の移動に加え、父島での4日間の滞在。
即ち、小笠原諸島への旅を実現する為には、計6日間の休暇を確保する必要があるのです。
多くの社会人にとっては、これだけでもなかなかのハードルとなります。
また、年末年始は父島に4泊停泊したり、台風のシーズンで直撃を受けるとなると、予定より早く出航したり、場合によってはさらに1日足止めされたりする恐れも出てきます。
夏季はある程度の運も絡んでくる事を念頭に入れておかなくてはなりません。
※ただし、ゴールデンウィークや夏季シーズン(7、8月)の繁盛期になると、3日に1便運航(父島に到着後、その日の内に東京へ戻る)しますので、3日間での往復移動が可能となります。
とは言うものの、父島の滞在時間はたったの4時間半しかありません。全く割に合わない旅程にしかなり得ませんので、まずお勧めはしませんが。
2.旅費が高い
第2の困難な理由に、旅費がどうしても高額になってしまう事が挙げられます。
まず、おがさわら丸の運賃ですが、最もグレードの低い2等和室の場合でも片道24,610円掛かります。ゴールデンウィークや夏季シーズン(7、8月)等ハイシーズンには、さらに片道運賃に2,000円ほど上乗せされます。
最低グレードでも、往復運賃だけで5万円弱。
もし、少しでもプライベートの空間が欲しいのであれば、2等寝台以上のグレードにしなくてはなりませんが、2等寝台で片道運賃28,040円、特2等寝台で37,210円と、どんどん高額になっていきます。
こうなると、往復するだけでも下手に海外に行くより高くなる事になってしまいます。
飛行機のように早期予約の割引や、格安チケットといったものが皆無なのが厳しいところなのです。
※ただし、シーズンを外した閑散期であれば、2等和室でもそれなりに快適に過ごせる場合もあるようです。時期次第では2等和室も選択肢に十分入るでしょう。
そして、島での滞在費も当然考慮に入れなくてはなりません。
小笠原諸島は世界遺産に指定されており、国指定公園でもありますので、キャンプをする事はできません。
ゲストハウスや民宿、ペンション等が主な宿泊施設となります。
最安値でも1泊素泊まりで5,000~6,000円程度から、夕・朝食の2食付で9,000円程度からというのが相場です。
ホテルらしいホテルもありはしますが、どうしても高額になりやすいものです。
つまり、どう安く見積もっても7万円前後の旅費(食事代除く)は確保しなくてはなりません。
少しでも便利かつ満足に過ごしたいなら、9~10万円前後は用意しておくのが無難。
これにプラス、現地での食事代や交通費、追加のツアーがあるならその費用も考慮に入れる必要があります。
手持ち金1、2万円程度では心許ないでしょう。お土産も買わず、ただのんびり過ごしたいだけであれば、これでも十分ではあると思いますが。
こればかりは、現地でどういった過ごし方をするかによってしっかり考えておく必要があります。
がっつり楽しみたいなら、最低でも旅費10万円+現地での手持ち金5万円。計15万円は掛かるものと考えておきましょう。
……もはや日本人だらけの海外旅行に行く、といった気持ちでのぞむのが正解か。
3.人気のシーズンはすぐに満席となる
最低でも6日間の旅程を必要とされる小笠原諸島への旅。
こうなると必然的にゴールデンウィークやお盆等の長期休暇シーズンを狙う人が殺到します。宿の予約も争奪戦となるでしょう。
比較的安いプランの宿や低グレードのおがさわら丸客室は、あっという間に埋まる事となります。
予約解禁となる2ヶ月前の午前の段階ですぐさま予約をしないと、トータルで20万円前後からのプランしか空きがない、或いはおがさわら丸が満員もしくは宿の空き室がない自体に陥る恐れが高まります。
おがさわら丸が1隻しかない事、大人数を収容できる宿泊施設が限られている事から起こる争奪戦。
長期休暇シーズンの確実な確保と早めの予約等の段取りが必要となります。
それでもリピーター続出の小笠原の魅力
これだけ困難な理由を説明すると、おいそれと小笠原諸島へ行けるものではない事が十分理解できると思います。
しかし、おがさわら丸の乗客の実に4割ほどの方はリピーターであるという情報まであります。これだけの困難な理由を跳ね除けてまで、2度3度と向かわせる気持ちにさせる。
それだけの魅力が小笠原にはあるという裏づけと言えるでしょう。
船から見た海はあまりにも青く澄んでいた。
ここでしか見ることのできない、数多い固有種の自然に興味を惹かれた。
イルカと泳ぐひと時はあまりにも至福の気持ちになった。
夜になると天の川が煌いていた。
私自身、その魅力にただ惹き込まれてしまうばかりでした。
自然の豊かさ、島の人たちの温かなおもてなし、そして宿やツアーで一緒になる方たちとの一期一会の楽しみ。
もしかすると、この旅での出会いがきっかけとなって、生涯にわたっての友人が出来る可能性も。十分ありえる事です。
これだけは行った人にしか分からない。言葉では伝えきれない貴重な体験は、いつまでも心に鮮明に刻まれる。
一度小笠原へ旅すれば、誰もがこう思う事でしょう。「絶対にまた行きたい」と。
小笠原の旅で得られる価値に比べれば、上記で挙げた困難などもはや微々たるものとなります。
小笠原で何がしたいか?小笠原で楽しめること
小笠原諸島で自由に過ごすことができるのは、父島と母島の2島のみ。さほど規模の大きくない2島ではあるものの、楽しめる事は十分に存在します。
ホエールウォッチング、ドルフィンスイム、南島上陸、スキューバダイビング、シュノーケル、シーカヤック、トレッキング……。
実に様々なアクティビティが楽しめます。
ただし、専門のガイドがついていないと楽しめないツアーもありますので、興味のあるツアーを予約しておくと良いでしょう。
冬にはザトウクジラ、夏にはマッコウクジラを見る事ができ、そしてイルカとも一緒に泳ぐ事ができるのは、国内ではこの小笠原くらいのものです。
南島もパンフレット等でよく見るであろう、よく知られたスポットとなっています。
この小笠原でしか楽しめない事が実に多くあります。
こちらを参照ください
■『小笠原アクティビティ一覧』
あまり体力はないが、ある程度は自然を満喫したい、或いはツアーに参加するのが苦手という場合でも勿論、楽しめる方法はいろいろあります。
例えば、レンタカーを借りて小高い山が意外と多い、父島の展望台の数々からの景色を眺める、というのも一つの楽しみ方。特にWeather Station展望台からは父島周辺の島々や太平洋が一望でき、運が良ければクジラを見ることもできる絶景スポットとして知られています。
夕方には綺麗な夕焼けを、夜になると満天の星空が広がるなど、どの時間帯でも楽しむ事ができる場所。それがWeather Station展望台です。
父島や母島の地元のカフェやレストラン等でゆっくり過ごしてみるのも一興。その地ならではのゆったりとした時間の中を優雅に過ごすことができるでしょう。
夜には天の川が肉眼で見えるほどの満天の星空を見る事ができます。
高台の展望台でなくとも、近くにビーチがあれば、そこが絶好の鑑賞スポットとなります。
さらに、アオウミガメの国内最大の繁殖地である事でも知られる小笠原。産卵シーズンになると、ウミガメの産卵の瞬間を見る事ができるかもしれません。(※近づきすぎたり、ライトを照らしたりするのはNG)
或いは母島に渡ってみるのも実に面白いもの。
母島では東京都道最南端、そして母島最南端の絶景スポットである小富士。
そして遺跡のような場所となっている北村小学校跡など、これまたユニークなスポットが揃っています。
他にも戦跡巡りとして、第二次大戦中に使用された大砲や施設の廃墟等を見学する事も可能。廃墟マニアにもたまらないでしょう。
このように、実に様々な楽しみ方がある小笠原の旅。
はっきり言って3泊4日程度では、まず飽きるという事はありません。
むしろ物足りないという気持ちでいっぱいになる事でしょう。
リピーターが多いのも頷けるというものです。
お勧めのプランと宿泊所
飛行機もなく、おがさわら丸1隻のみしか移動手段がない事も関係しているのか、格安チケットというものは存在しないと言っても過言ではありません。
せいぜい、小笠原開運のサイトで紹介されている2等寝台往復分+3泊分の宿泊所のセット予約が可能な「おがまるパック」が最も手軽かつお得、というくらいのものです。
ただ、手早く船と宿泊施設の予約を済ませるなら、これでも十分。
一人旅するなら、十分すぎるほどのプランです。
旅行会社でもパッケージツアーが各種ありはしますが、値段が劇的に変わるものはありません。
ただ、トレッキングツアーやホエールウォッチング、ドルフィンスイム等の各種アクティビティがセットになったものも多数ありますので、小笠原へ行きたいが特に何をしたいのか決めていないと言う場合は、各旅行会社にて相談してみるのも良いでしょう。
ちなみに、小笠原開運の「おがまるパック」では、オプションプランとして、父島バスツアーやドルフィンスイム+南島上陸ツアーを追加する事も可能。このバスツアーだけでも、父島の見所の多数を一気に回れますので、一考してみる価値は十分にあります。ドルフィンスイムも、必ず泳ぐ必要はなく、船上から眺めるだけというのも可能です。
(※南島上陸ツアーは、天候や時期(11月~2月)によっては上陸ができない場合がありますので、注意)
この場合、父島3日目の予定が完全に空いてしまいますが、さらにトレッキングやダイビング等のツアーを組み込んだり、弾丸移動的になってしまいますが、母島へ日帰り移動してみるのも、非常に面白いものとなります。
宿を予約するなら、アクセスや買い物になにかと便利な「大村地区」がお勧めになりますが、「扇浦地区」、「境浦地区」も捨てがたいもの。
「大村地区」に比べて人が少なめであり、ビーチが近く、自然にも囲まれていますので、実にゆったりとしたひと時を過ごす事ができるでしょう。
港までのアクセスが不便に思われる事でしょうが、時間次第では宿のオーナーが送迎してくれる事もあります。宿泊施設に問い合わせてみましょう。
近くにバスも通っていますので、レンタカーを借りる必要も特にありません。(本数は少なめですが)
※おがさわら丸乗船券は、乗船日の2ヶ月前の午前9時から(その日が土・日・祝日の場合は次の営業日の朝9時より)販売開始となります。
ただし、年末年始・ゴールデンウィーク・7月・8月などの多客期は予約開始の特定日を設ける場合あり。
最後に
ここまで小笠原諸島の概要をやや大雑把にまとめてきましたが、少しでもその魅力が伝わっていただけたでしょうか。
何度も繰り返しになりますが、小笠原に行く為には多少の困難がつきまといます。
しかし、その困難を越えて旅を実現させた時の喜びというのは、非常に格別なものとなります。
行った事のある人にしか分からない、語りきる事のできない感動が体験できる場所。それが小笠原の旅というものです。
次回から実際に私が小笠原諸島に行った時の様子についてまとめていこうと思います。
リンク
■『小笠原海運』
・『おがまるパック』
■『小笠原村観光協会』
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