YOKOSUKA軍港めぐり ~海自・米海軍の迫力の艦艇をめぐる船旅~ -2016.4-

 

今回は「YOKOSUKA軍港めぐり」に実際に乗船しての内容についてまとめてみようかと思います。
軍港めぐりの簡単な概要や注意点などについては前回の記事を参照ください。

今回の記事はかなり長いです。
軍事物とかに一切興味がない方にはあまりにどうでもいい内容がずらりと書かれていることかと思いますが、そんなに軍事物に興味がない私でも海上自衛隊とアメリカ海軍の護衛艦や軍艦の数々には目を奪われるものがありましたので、軽く目を通していただいて少しでもその雰囲気を感じ取っていただければと思います。
この記事中の説明については、軍港めぐりのガイドさんの説明内容を元にまとめていますが、ある程度は自分で調べているものもあります。私自身軍事物についてはあまり知識がないので、間違っている箇所があればご指摘くださいますと幸いです。

ガイドさんも限られた時間内に説明する必要がある事でしょうから、けっこうザックリとした説明で流している部分もあるかと思われます。

横須賀軍港クルーズ01

横須賀軍港クルーズ02

だいたい出発の5分くらい前から乗船開始となります。
それまでには上船場の前で待っておき、遅れないように注意しましょう。
前回もお伝えしましたが、船内は完全に自由席となっています
もし狙い目の場所があれば早めに並んでおきましょう。

横須賀軍港クルーズ03
私個人の狙い目は、2階オープンデッキの右端部分。

横須賀軍港クルーズ04
軍艦クルーズの運航ルートは、横須賀港から半時計回りのように進んでいきますので、進行方向右手側に見所が集中します。
また、各艦艇の横を過ぎた後でも、船の後方からだとあます事なく見ることもできます。

横須賀軍港クルーズ05

そして出発時間となり、船はいよいよ動き出します。
横須賀軍港クルーズ06まず船に乗って始めに見えてくるのが、進行方向右手側に停泊している潜水艦。
右手側の一帯はアメリカ海軍の第七艦隊基地となっていて、緊急時以外では日本の艦艇は停泊する事ができません。
ではなぜ日本の潜水艦がこのように停泊できているのかというと、海上自衛隊の潜水艦司令部がちょうど潜水艦のすぐ後ろ側にあるから。

潜水艦は隠密性が要の艦艇であり、軍事機密の塊でもありますので、他の艦艇のように艦番号を見ることができず(進水式から自衛隊旗授与式(海自への引渡し)までは「セル」と呼ばれる潜水艦艦橋に明記されますが、授与式後は消されます)、艦体の一部しか見えないので、艦名の特定は困難です。
とはいえ、現在海上自衛隊で就役中の潜水艦は「おやしお型」か「そうりゅう型」の2種類(練習潜水艦の「あさしお」を除く)となっており、どちらに分類されるかだけは簡単に見分けることができます。
それは、操舵部(尾びれのような場所)の形。
「おやしお型」の操舵は十字型なので海面に1本見え、「そうりゅう型」はX型なので斜めに2本見ることができます。
(他にも見分けがつくポイントがありますが、この操舵部の方が素人でもパッと見で分かります)

横須賀軍港クルーズ07この写真の場合、手前の潜水艦が「おやしお型」、奥の潜水艦が「そうりゅう型」という事になります。

ちなみにこの潜水艦は、軍港めぐりの船に乗らずとも、「ヴェルニー公園」から見ることが可能です。

横須賀軍港クルーズ08そして次に目に飛び込んで来るのは、昨年横須賀に就役したヘリコプター搭載護衛艦「いずも」。
全長約250M、基準排水量約2万トンと、現在就役中の護衛艦としては日本最大で、最大14機のヘリコプターを搭載可能。
収容人数も500人と、その規模はやはり大きいです。
ちなみに、これら艦艇の重さを表すのに総重量だとか体重だとかいった言い方はせず、排水量という言い方をします。
排水量とはプールの中に船を入れてプールから溢れてくる水の量、といったイメージ。
つまり、この「いずも」を大きなプールに入れた時、そのプールから2万トンもの水が溢れ出る、という事になります。

そして1つの市をまかなう事ができるほどの発電機を搭載しているらしく、もし1つの街が電力ダウンしたとしても、「いずも」が来れば電力供給することも可能であるとか。
ちなみに横須賀にある艦艇は、みんな電力供給ができはしますが、変圧器を使わないと供給ができない国もあります。
しかし、「いずも」ならどこに行っても直接電力供給が可能という事で、注目を浴びているらしい。

横須賀軍港クルーズ09次に進行方向右手に見えてきたのは、アメリカ海軍の2隻のイージス艦。
手前がアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「バリー(艦番号52)」、奥がアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「カーティス・ウィルバー(艦番号54)」。

イージス艦という言葉だけなら聞いたことがある、という方も多いとは思いますが、そもそもイージス艦とは何かと言いますと、遠くの敵機を正確に探知するレーダー、迅速に状況を判断・対応する高い情報処理能力、そして一度に多くの目標と交戦できる対空射撃能力を備えた非常に高性能な“イージスシステム”を搭載した艦艇のことを言います。
ちなみに「イージス艦」という艦種があるわけではありません。駆逐艦だろうが巡洋艦だろうが、イージスシステムが搭載されていればそれはイージス艦と呼ぶことができます。
(余談ですが、「JMSDF 海上自衛隊ホームページ」の艦艇ギャラリーのページにも「イージス艦」という分類はされていません。「こんごう型」と「あたご型」がイージスシステム搭載護衛艦)

どれがイージス艦なのか、といった見分け方は、実は簡単です。
艦橋部に亀の甲羅のような8角形の板状のもの(イージスシステムのレーダー)が取り付けられていれば、それはイージス艦であるということが一目で分かります。
軍港クルーズ10
通常のレーダー(クルクル回る感じのヤツ)ではどうしても死角が発生してしまうため、物凄く早いミサイル等には対処しきれない恐れがありますが、イージスシステムの場合だと板状のレーダーを4方向に搭載する事により、360度常に監視することができるというもの。
監視範囲もかなり広く、横須賀からだと北は秋田県あたり、西は兵庫県あたりまで監視する事が可能だとか。

横須賀軍港クルーズ11ちなみに、イージス艦は現在100隻ほど作られていますが、それを所有している国はアメリカ、日本、スペイン、ノルウェー、オーストラリア、韓国の6ヵ国しかありません。(大半はアメリカが所有)
これはアメリカがイージスシステムを開発した為、アメリカが特許を持っているという事があり、アメリカと仲の良い国しかイージス艦を持つ事ができないという理由があります。

そして、非常に高性能なシステムである為に、海上自衛隊の場合、イージス艦1隻あたり約1,500億円と非常に高額です。
ちなみに、いずもで約1,200億円だとか。いずもの建造費を上回っています。
1,500億円というと、東京ディズニーランドの初期投資費用とほぼ同じだとか。
これを高いと見るか、何だそんなもんかと見るかは、人によって違ってくるかと思いますが。

横須賀軍港クルーズ12ちょっと奥の方にもさらに2隻のイージス艦が。
手前に見えるのがタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「チャンセラーズビル(艦番号62)」、奥がタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「アンティータム(艦番号54)」。

横須賀軍港クルーズ134隻のイージス艦の間に停泊していたのが、ドック型揚陸(ようりく)艦「ジャーマンタウン(艦番号42)」。
長崎県は佐世保のアメリカ海軍基地を母港とする揚陸艦ですが、この日はたまたま横須賀に来ていたようです。
このように、運が良いと普段はお目にかかれないような艦艇を見ることもできたりします。
ドック型揚陸艦とは、ウェルドックと呼ばれる場所に収容された上陸用舟艇を用いて、人員や物資の輸送を主な目的とした艦艇の事。

横須賀軍港クルーズ14さらに奥の方に見えるひと際大きな艦艇が、原子力空母「ロナルド・レーガン」。

横須賀軍港クルーズ37
全長333M。東京タワーを横に倒したのとほぼ同じ長さ。
排水量は10万トン。
80機の戦闘機を搭載可能で、収容人数も6000人。
まさに動く空港のような規模。
海自のいずももかなりでかいなと思ってましたが、やはりアメリカはスケールが違う。

横須賀軍港クルーズ15
アメリカの空母をアメリカ以外の国でも見ることができるのは、この日本の横須賀のみ。
その事からもこのYOKOSUKA軍港めぐりの目玉の一つでもあります。
随分奥の方に停泊しているので肉眼ではあまりその巨体を実感することができませんが、空母は軍事機密の塊でもあるので仕方ないことではありますが。
陸上からは見える場所が極限られており、まともに見ることができるのは、こうした船の上からのみ。

横須賀軍港クルーズ16
ちなみにこの日は、甲板に戦闘機(レプリカ)が出ていました。
これを使ってタッチ&ゴーの練習や動きの確認、整備の訓練を行っているのだとか。

横須賀軍港クルーズ17沖の方には、アメリカ海軍の貨物弾薬補給艦がありました。
けっこう遠くの方にいてあまりちゃんと見ることはできませんでしたが。
横須賀軍港クルーズ18船は横須賀港を抜けて、長浦港へと進んでいきます。

横須賀軍港クルーズ19長浦港へ向かう際、進行方向右手奥の方に大きなクレーンのある場所が見えてきますが、ここが71年前の終戦の際にアメリカの戦艦ミズーリが錨を下ろした場所であるとか。
すなわち、終戦直後に日本軍が調印式を行った場所ということでもあります。

この場所はペリーが測量していた際に見つけた場所でもあり、ここから横須賀港を見渡す事ができ、まるで横須賀を手に入れた気分になったとの事で、ここをアンカーポイント(係留地)にすべく、持っていた地図に印を付けたといいます。

そしてアメリカ軍はこの地図を見て「調印式をするならここにしよう」という事になったのだとか。

横須賀軍港クルーズ20長浦港に入ってからすぐ右手側に見えてきたのは、潜水艦救難母艦「ちよだ(艦番号405)」。
その名の通り、浮上できなくなってしまった潜水艦の乗組員を救助するための艦艇。
基本的に潜水艦は海底スレスレを潜航していくので、水深の深い難しい条件化でも乗員を救出する事を目的としています。
横須賀軍港クルーズ21「ちよだ」のすぐ後ろ側に停泊しているのが、海洋観測艦「にちなん(艦番号5105)」。
海底の地質、潮の流れ、塩分濃度等を測定し、海の中の地図を作成するという、艦艇の目とも言うべき艦艇。

横須賀軍港クルーズ29特に海底を進む潜水艦にとっては重要な役割を果たします。

横須賀軍港クルーズ22「ちよだ」のすぐ隣にも同じく海洋観測艦の「しょうなん(艦番号5106)」が停泊しています。

横須賀軍港クルーズ23「にちなん」のすぐ隣に見える施設は、海上自衛隊の自衛艦隊司令部。
ここから司令長官が全国、世界の艦艇等に作戦行動指示を送る、海上自衛隊の心臓部とも言うべき施設です。

横須賀軍港クルーズ24長浦港のほぼ中心部には、去年除籍となった海洋観測艦「すま(艦番号5103)」が浮かんでいました。

横須賀軍港クルーズ25除籍になると艦番号は消されてしまいますが、艦首の方をよく見てみると、うっすらと「5103」の艦番号を確認することができます。
艦艇の寿命は約30年ほどとなっており、この「すま」は32年使用され、現在は除籍されてこのように解体待ちとなっているのです。
いつ解体されるかは不明。もしかしたら数ヶ月にわたって放置されるかもしれませんし、1週間たてば無くなってしまっているかも。
横須賀軍港クルーズ26
船は長浦港内を時計回りに進んでいきます。

横須賀軍港クルーズ27左手に見えてくるのは、掃海艇「やえやま(艦番号301)」。
木造船です。
なぜ木造なのかというと、掃海艇は機雷(海の地雷のようなもの)を撤去するための艦艇で、機雷の中には艦艇から発せられる磁気に反応するタイプのものもあるため、木造にすれば磁気を発する事がないから。
この「やえやま」の全長は約70M。
今でこそ、それほど大きくない艦艇のように見えますが、かつてペリーが来航した際に乗っていたあの黒船とほぼ同じ大きさであるとか。

横須賀軍港クルーズ28さらに奥の方に2隻の掃海艇が停泊していました。
えのしま(艦番号604)」、「ちちじま(艦番号605)」。
この2隻は木造ではなく、繊維強化プラスチック(FRP)製の艦艇。
FRP製の船はヨットやクルーザーにも使用されていますので別に珍しいものではありませんが、軍事用としては初の、そして日本最大のFRP船となっているようです。
手前側に見えているのは木造の掃海艇「のとじま(艦番号682)」。

そして、木造船の「やえやま」、「のとじま」と、FRP船の「えのしま」、「ちちじま」を一度に見ることができるのは、けっこう珍しいことだとか。
いつもどちらかは港にいないようなので。

横須賀軍港クルーズ30
長浦港を1周し、船は水路を通って横須賀港へと戻っていきます。

横須賀軍港クルーズ31ちなみにこの水路は130年前に作られたもので、それまでは隣の島と繋がっていて半島の形を成していたのですが、長浦港と横須賀港を接続するべく、手作業でこの水路を作ってしまったのだという。
手作業というのも物凄いものがありますが、何よりもこれほどの水路をわずか3年で作ってしまったということも驚きです。

横須賀軍港クルーズ32横須賀港に戻ってくると、すぐ右手の方に見えてきたのは、補給艦「ときわ(艦番号423)」。
海上を走りながらの燃料の補給が可能で、燃料だけでなく水の補給も可能。

横須賀軍港クルーズ33ここから多くの艦艇を見ることだできます。
はたかぜ(艦番号171)」、「やまゆき(艦番号129)」、「やまぎり(艦番号152)」。

横須賀軍港クルーズ34「はたかぜ」には前と後ろの両方に砲台が取付けられています。
実は「はたかぜ」が竣工したのは昭和58年とけっこう古く、当時はヘリコプターはあまり重要視されていなかったので、船尾の方にもこのように砲台があるのだとか。
他の2隻の船尾には砲台は無く、変わりにヘリコプターの格納庫が搭載されています。
そして、「やまぎり」の艦長は女性が務めており、護衛艦発の女性艦長ということで話題にもなりました。

横須賀軍港クルーズ36さらに進むと、「おおなみ(艦番号111)」、「むらさめ(艦番号101)」、「てるづき(艦番号116)」の3隻の護衛艦が停泊していました。

「おおなみ」と「むらさめ」の2隻はソマリア沖の海賊から民間船を護衛するためにソマリアへ派遣された事も話題になりました。
普段生活している中でも防弾チョッキを着用し、緊迫した日々を送っていたようです。
本当にお疲れ様でした。
(これまた余談ですが、当時、ソマリア沖への海上自衛隊派遣反対を主張していた「ピースボート」もちゃっかりソマリア沖にて海上自衛隊に護衛されてたりします)

横須賀軍港クルーズ38

横須賀軍港クルーズ39

横須賀軍港クルーズ40そして船は上船場へと戻っていきます。
ここまで約45分間のクルーズ。長いようであっという間でした。

ちなみに、乗船チケットには番号が振られています。
軍港クルーズの各便毎に抽選が行われており、番号の下3桁の番号と抽選の番号が一致すれば景品が貰えるとのこと。

横須賀軍港クルーズ41私のチケットの場合、「820」が番号となります。
チケットを購入したカウンターの隣にて番号が発表されます。

横須賀軍港クルーズ42惜しい…。
1番違いだったか。
どんな景品が当たるのだろう。

横須賀軍港クルーズ43
長々と乗船レポートをまとめてきましたが、予備知識は全くのゼロであってもガイドさんが順番に解説してくれますので、十分に楽しむ事ができると重います。
横須賀港や長浦港周辺にまつわる簡単な歴史なども一緒に解説してくれますので、艦艇に興味がない方であってもそれなりに堪能できる事でしょう。
「YOKOSUKA軍港めぐり」という、横須賀の観光名物の一つでもありますが、実際は日本の国防の為に日夜訓練に励む自衛官の人たちが実際にこれらの護衛艦に乗り込んでいるのだと思うと、「楽しかったなぁ」などという簡単な気持ちに止まらず、もっと熱い思いが込み上げて来るというものです。
といっても、別に気構える必要は全く無く、気楽に軍港クルーズを楽しむだけでも十分にアリかと思います。
こうした艦艇の数々を実際に見て、少しでも興味を持つことができれば、それだけでも価値があるというものです。

横須賀軍港クルーズ44
ちなみに、海上自衛隊の5大基地のうち、ここ横須賀と呉、舞鶴の3箇所で軍港クルーズを楽しむことができます。
(佐世保は現在は団体利用客のみ)
それぞれに特色があり、横須賀とはまた違った楽しみがあると思います。
どうせなら制覇してみるのも面白いかもしれません。
横須賀軍港クルーズ45


  リンク
『TRYANGLE WEB/YOKOSUKA軍港めぐり』
『YOKOSUKA海軍めぐり/予約』
『ショッパーズプラザ横須賀』

 

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