牛と孔雀たちの島、沖縄県・黒島を周遊する
黒島(くろしま)。
沖縄県の八重山諸島にある島の一つであり、石垣島と西表島のほぼ中間に位置します。
島の形がハート型に似ている事から、「ハートアイランド」とも呼ばれていますが、何よりもこの島、牛の牧畜が盛んであり、牛たちの数が島の人口よりも圧倒的に多い事から、「牛の島」という異名でも知られています。
多くの牛たちの姿に圧倒される黒島の風景
黒島の人口は2016年時点で約220人。これに対し、牛の数は2800頭ほどと、実に人口の10倍超もの牛が育てられています。
島の大部分が牧場となっており、いろんな場所で牛たちの姿を見ることが出来ます。
まさに「牛の島」。
黒島で育てられる牛は「黒毛和牛」と呼ばれる、やや小柄な肉用牛。
黒島で1年ほど育てられた子牛はセリにかけられ、石垣島や九州を中心とした全国のブランド牛となります。
毎年2月の最終日曜日には、様々な牛肉料理が楽しめる他、牛1頭が当たる抽選会がある事で知られる「黒島牛まつり」が開催される等、まさに“牛尽くし”な島となっています。
ちょっと近寄ると、一斉にこちらをジーッと見られる事も。
最初は「う……」とたじろいでしまうかもしれませんが、襲ってくるような事はありません。
子牛たちの姿もちらほら見かける事が出来ます。
寝そべっている牛の頭にカラスがとまっている光景も。
いろんな姿を楽しむ事が出来ます。
野生の孔雀たちの姿とその複雑な背景
ちなみにこの黒島、「牛の島」以外にももう一つの異名があります。
島内をくまなく観察してみると、キジに似たような、でもどこか違う鳥の姿をちらほら見かけると思います。
そう、この黒島には野生化した孔雀が住み着いており、「孔雀の島」という異名もあるのです。
お墓の上に、何やら凄い鳥の像があるなと思いきや……立派な孔雀でした。
運が良ければ、牛たちと共に孔雀の姿も見ることが可能です。
ただ、孔雀に近寄ろうとすると、あっという間に逃げてしまいますので、遠めからそっと鑑賞するようにしましょう。
とはいえ、この孔雀は今でこそ野生化したものではありますが、本来は黒島はおろか、日本国内では生息していなかったもの。
つまり、外来種なのです。
元々島に生息していなかった鳥が近年になって繁殖したが故に、もの珍しいと思う反面、非常に厄介な存在にもなってしまっているのです。
この孔雀はインドクジャクという種であり、原産地はインド亜大陸・スリランカの鳥。
1980年代に観賞用としてインドクジャクが持ち込まれましたが、台風によって飼育小屋が壊され、その際に数羽が脱走しました。
八重山諸島は温暖な地域であり、黒島には天敵もいない事もあって、30年程で数千羽以上も生息するにまで異常繁殖をしました。
観賞用として動物園でもお馴染みの孔雀ですが、ひとたび野生化してしまうと、家庭菜園や牛たちの餌の食害をもたらすやっかいな存在となってしまいます。
島民のほとんどは牛の畜産で生計を立てており、この牛の肥料が食べられてしまうと、牛たちの栄養バランスが崩れ、大きな打撃を受ける事となります。
さらには、サキシマカナヘビやサキシマスベトカゲなど、固有種の生態系をも破壊してしまう為、2013年には1400羽以上もの孔雀が駆除されてしまいました。
その後も銃器による駆除や、探索犬による繁殖卵の駆除などが続けられています。
観賞用として持ち込んでおきながら、逃がしてしまった挙句に駆除に至るなど、非常に複雑な気分になってしまいます。
孔雀も生きる為には極当然の事をしているまでであり、元来罪はありません。
しかしながら、そのまま放置してしまうと、畜産や島の生態系に影響が出てしまう……。
何とか共存する方法はないものか。
黒島へのアクセスと周遊方法
この黒島には空港がない為、石垣島から船でアクセスする事となります。
「石垣島離島ターミナル」から黒島行きの船で約30分ほど。
乗船券は大人一人¥1,150(往復¥2,190)、子供一人¥580(往復¥1,100)。
運航会社は「八重山観光フェリー」、「安栄観光」、「石垣島ドリーム観光」の3社となっていますが、何れも同じ料金です。
ちなみに、「八重山観光フェリー」と「安栄観光」は共同運航(同じ船を使用)となっています。
「八重山観光フェリー」「安栄観光」では一日計5往復ほど、「石垣島ドリーム観光」では一日計3往復ほどの運航がされていますが、時期によって変化する可能性もありますので、詳細は各社のサイトを参照してみましょう。
ちなみに、「八重山観光フェリー」と「安栄観光」は、インターネットでの乗船券予約が可能となっています。
・「八重山観光フェリー」 https://www.yaeyama.co.jp/index.html
・「安栄観光」 http://www.aneikankou.co.jp/
・「石垣島ドリーム観光」 http://ishigaki-dream.co.jp/
乗船券を購入し、いよいよ船に乗って黒島へ。
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ちなみに、石垣港を出る際、海上自衛隊のはやぶさ型ミサイル艇「しらたか(829)」が停泊していました。
もう1隻奥に停泊していましたが、艦番号が隠れて見えなかった為、不明。ただ、ほぼ同じ形で280番台であるので、はやぶさ型の一つであるのは確か。
このように、運が良いと珍しいものが見えるかもしれませんので、船旅の最中も景色をいろいろ楽しんでみましょう。
また、黒島周辺の海は非常に綺麗である事でも知られています。
あまりに美しいライトブルーの海が一面に広がる光景。
船旅の最中は、スマホよりも海を見ている事をお勧めします。
そして黒島へ到着。
船客ターミナルの前には、「牛の島」らしく、牛のモニュメントが旅行者を迎えてくれます。
黒島は周囲12.6kmと、さほど大きくない島ではありますが、さすがに徒歩では時間が掛かりますので、レンタサイクルをお勧めします。
黒島は山がほとんどない平坦な島となっていますので、変速機能のない自転車でも十分です。
黒島船客ターミナルの前でレンタサイクルの案内をしている方に声を掛け、レンタサイクルの手配をしてもらいます。
私は「まっちゃんおばーのレンタサイクル」を利用。
料金は1時間¥300、1日¥1,000とリーズナブル。
ちなみに、島内をゆっくり目に周っても、3時間あれば十分足りるでしょう。
急ぎ目でも1時間あれば、だいたい1周する事が可能です。
ただ、島内は牛や孔雀だけでなく、島ならではののどかな集落もありますので、どうせならじっくりと見て周りたいものです。
「パティシエになりたい」という微笑ましい夢を書いた立て札も。
島内には「道100選の碑」もあります。
島内唯一の学校である黒島小中学校のすぐ近くには、黒島展望台もあります。
さほど高くない展望台ですが、平坦な黒島を一望するには十分な高さがあります。
牧草地帯と牛たちの姿をじっくりと眺めてみましょう。
離島と牧場という独特の組み合わせならではの風景を楽しみながら、島内を満喫してみましょう。
また、島の西側にはビーチもあり、夏は黒島周辺の綺麗な海を満喫する事も出来ます。
というより、黒島に訪れる方の多くは海で楽しむ事が目的だとは思いますが。
牛たちとのどかな島の風景が織り成す憩いの地、黒島。
八重山諸島には実に興味深い島が多いものですが、この黒島もまたその例外ではありません。
閑静な牧草、動物、集落の赤瓦と石垣……。
ここもまた沖縄ならではの、そしてここでしか味わえない独特の空気が広がる貴重な島です。
リンク
■『八重山観光フェリー』
■『安栄観光』
■『石垣島ドリーム観光』
>>何とか共存する方法はないものか。
ないでしょう